大倉正之助先生 解説「能楽について」(2018年10月16日放送)

レインボータウンFM 88.5MHz
新番組【大倉正之助 鼓ライダーが行く!】
毎週火曜日 19時30分~19時40分 放送

パーソナリティの由結あゆ美です。

新番組「大倉正之助 鼓ライダーが行く!」は、能楽囃子大倉流大鼓 重要無形文化財総合認定保持者・大倉正之助先生をアンカーマンに迎え、日本の伝統芸能をはじめとする文化に関わる人・モノ・コトをご紹介する番組です。

10月16日㈫の放送では、「能楽」の根源や歴史について、正之助先生が分かりやすく解説してくださいました。

「能楽」の根源とは何か⁈

歴代の武将たちは、能楽の達人だった⁈

世界の子供たちの魂を揺さぶる能!

これを聴けば、貴方の日本人としての潜在能力がますます目覚めることでしょう♫

▼第3回放送のバックナンバー動画はこちら


由結:このコーナーでは能楽囃子大倉流大鼓重要無形文化財総合認定保持者・大倉正之助先生をアンカーマンに迎え、日本の伝統芸能をはじめとする文化に関わる人・モノ・コトをご紹介してまいります。こんばんは、パーソナリティの由結あゆ美です。そして…

 

大倉:大倉正之助です。

 

由結:先生、番組も始まって三週目ですね。

 

大倉:そうですね。本当に毎回お世話になります。

 

由結:こちらこそです。本日は、能楽師でいらっしゃる先生から能楽のお話をお聞かせ頂きたいと思っております。

 

大倉:はい。能自体が持ってる一番ベースになってるものっていうのは、人間がこうやって自然の中に育まれて、自然の一部であるということ。そして、人間はそういうものを共有して暮らしていた。その時に素晴らしい収穫を得た喜びであったり、とか、そして日々健康に暮らせる喜びであったり、そういうものを何か音にしたり謡にしたり舞にしたりしたわけです。そういう人間の喜びが発露だと思います。だから能って、イメージとして何かちょっと暗いとか、能面のような表情とかね。皆さんどちらかって言うとそういうネガティブに捉えられてる傾向もあるかと思いますが、基本は実はもの凄くネアカと言いますか、本当は生命を称えて賛歌しているものなんです。

 

由結:なるほど。喜び、生命の賛歌が根源にあるのですね!

 

大倉:だから例えばどんなに”暗い・悲しい・寂しい”とか、そういう演目の場面でも、我々のお囃子っていうのは力を込めて「よおー!」とか言って「パーンッ」と打つ。その懇親のやる力を注いで打ち込んでいくとか。笛ももちろん情感的になる部分あっても、やっぱりピッチとしては鋭く切り裂くように「ピー!」っていうふうに吹き込んでくるとか。その命というもののベクトルと言うか、どんなことがあっても次へ繋いで渡していく。そういうものが能の中には脈々と受け継がれている。だからよく能のことを”鎮魂能”と言いますね。2020年オリンピックの総合監督 能楽師の野村萬斎さんが選ばれて、彼がやっぱり”鎮魂と再生”っていうことをテーマにしていました。まさしくその能はそこが本領と言いますか、”魂を鎮める”。”魂を鎮める”ってどういうことかっていうと、魂の居場所をしっかりと定めるっていうことなんですよね。だから戦国時代の武士達が出陣を前に能を舞い、鼓を打ち込む、織田信長も鼓が好きだったり、秀吉なんかも実は能が大好きで、自作自演の能を作ってたんですよ。うちのご先祖さんも関わって舞台でお相手したり、一緒になって舞台上で共演するようなこともあったでしょうし、色んな加護も受けていました。石田三成も親戚、先祖の血筋にあたります。そういう意味ではこの能に皆非常にはまったわけです。柴田勝成や明智光秀、北条時宗もそうですよね。北条なども自作自演してると言います。それは一つには”魂を鎮める・鎮魂”っていう目的でそういうのに仕立てたとか。だから戦国の武士達が動揺し、浮足立つ部分を鎮めるため、”鍛錬・胆力”をつけるんです。”舞う・謡う・鼓を打つ”ということで魂が定まる。そうすると不動心が生じてどんなものにも立ち向かっていける覚悟ができる。そういう時に”能”というものが活用されたわけです。

 

由結:肝を据えるとよく言いますが、武士には胆力が必要だったんですね。

 

大倉:そうそう。能で胆力がついてくる。謡うことでもそうですし、舞うこともそうだし、お囃子も鼓もそう。全身全霊でそういうものに打ち込む・向かうっていうことはどんな戦場でどんな状況になっても覚悟が必要です。能楽を通してそれを身につけたのでしょうね。

 

由結:なるほど。実際にこの”覚悟”というのは、言葉で言うと簡単なんですけれども、並大抵のことではありませんよね。現代ではどうなのでしょうか。

 

大倉:現代でもやはり聞く人の魂が揺さぶられたりとかね。一番わかりやすいのは小学校とか色んな所へいきますが、向こうは聞きたいと思って聞きに来てるんじゃない方々にぶつけると、そこで面白いことが起こるのを感じます。

 

由結:科学反応が起こるわけですね。

 

大倉:アメリカなども行きましたが、海外の学校なんか行くとやっぱりちょっと高校生ぐらいっていったら皆遊び盛りですよ?まともに人の話も聞かないようなね。そういう高校をずーっと回ったんです。その子ども達はいきなり私の鼓の調べを聴いて、声を聴いて、それまではガム噛んで足組んで投げ出して「なんだー?」みたいな横柄な感じだったのに、バッと背筋が伸びてね、それでバッと前にこちらに食いついてきたんですよね。だからそれを見ていた先生とか一緒に行った立会いの人が、「やっぱり何かそういう言葉を越えて伝わるものっていうのは、何か伝わるんだ」っていうことをおっしゃっていましてね。そんな機会もありました。

 

由結:国境を越えてしまうということなんですね。

 

大倉:そうですね。だから能っていうものはそういう下地があるから、それはどんなものでも乗っかるんですよ。宗教も国籍も人種も、それらを全てを超越した受け皿として、能っていうものは用いることができると。だから本当に今の世界がこの一つの生命体っていうか、そういうものに基づいた文化を創っていこうとすれば、能というものを土台に作っていくと、意外と色んなものを取り込んでいけるんじゃないかなと思いますよね。

 

由結:今後も先生の能楽を通しての情報もお聞かせ頂けますので、楽しみにしております。さぁ”大倉正之助 鼓ライダーが行く!”オ別れのお時間です。また来週お会いしましょう。お相手は…

 

大倉:大倉正之助!

 

由結:由結あゆ美でした。また来週!

 

大倉:また来週。


Rainbow Town FM 88.5MHz「大倉正之助 鼓ライダーが行く!」
■人気の2時間情報番組「大江戸ワイドスーパーイブニング」内 のコーナー番組
■放送日時:毎週火曜日 19時30分~19時40分
■出演者:アンカーマン 能楽師 大倉正之助先生
パーソナリティ 国際マナー講師 由結あゆ美
■番組運営:株式会社ユウキアユミサロン


【ラジオ視聴方法について】

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